2010/08/01

からだの設計にミスはない 写本(p15〜18)

からだの設計にミスはない

当時は函館にいたもので、患者には漁夫が多かった。
ある日、マストから落ちてケガをしたのがやってきた。
額に何かをぶっつけたらしく、ペコッと丸くへっこんでいる。
陥没骨折というやつです。

これは、ちょっと手術以外にどうしようもないな、と思ったが、フトこっちからへっこんだんだから、反対のどこかに何か変化があるのではと思い直して、頭のあっちこっちを触ってみたのです。
するとちょうど後頭部の対称点にひどい圧痛があるという。

そして、そこの所を触ると、うんと気持ちがいいと言うんですね。気持ちがいいんだったら気持ちがよくしてやれ、とばかりにそこを毎日押してみた。
するとね、骨がだんだん出てきてんだ。初めはこんなことってあるのかな、と思っていたが、確かに出てきている。
それからはもう一生懸命、とにかく押してやれと思って、それを2〜3ヶ月続けてみたら、ほとんど凹みが目だ立たない程度にでてきたんですよ。
こっちはもうびっくりしてしまった。こんなことは現代医学で教えてくれないものね。

<先日、ある患者さんとこのような会話をしました。
「東洋医学では、肺と大腸は陰と陽の関係があるんですよ。」
「あれ!じゃあ私が結核になったとき、急に便が細くなったのは、関係があるのかしら?」
「それは、あると思いますよ。
肺と大腸は位置的にもからだの対角。左の肺が右の上行結腸と関係があると思います。すべて、表裏一体ですから。」
このような会話をしました。
ぽろっと話したことから、思わぬ真実を知ることができました。>

私が、「とにかく気持ちのいいことをしろ、気持ちのいいことが1番だ」といつも言うのはこんな経験があるからなんですが、まあ、そういった療法をする人が、民間には昔からいたんです。
私はその後ずっと、あらゆる機会をとらえてはいろいろ試みてみましたが、まさにその通り、という確信をますます強くしたものでした。

気持ちのいいことは何をしてもいい。苦しい方、痛い方に動くのでなく、ラクな方、気持ちのいい方へ動けばいい。

だけどもね、その時にはうんと気持ちよくっても、後になって気持ちが悪くなる、つまり、後味が悪いっていうのがあるが、それは本当の気持ち良さとは違う。

例えば、食い過ぎ、二日酔い、あれは後味悪いよね。
セックスにしても、相手とおしゃべりしたり、手を触ったりキスしたりするぐらいで楽しむなら、まあそんなに後味が悪いなんてこともないだろうが、ある特定のところで、がんばってはしゃぎすぎるとダウンして、翌日はからだがシャンとしなくなる。

結局ね、撫でても、さすっても、たたいても、火を押しつけても、針をさしても、たとえ焼火ばしを押しつけても、それが気持ちよければ何をしてもかまわないんだ。
後味が悪くなければかまわないんですよ。

よく患者さんは「これは冷やした方がいいですか、温めたほうがいいですか」と聞きますが、私はいつもこう答えることにしています。
「冷蔵庫も入ったていいですよ、それが気持ちいいならね」と。

<橋本先生が、快適感覚に立脚した操体の体系作りに、大きな影響を与えたのが、この「マストからの転落・陥没骨折事故の治療」。
己が存在する以前からある生命体に感謝し、その生命体は常に快適感覚に従うという理を理解して治療に専念すべきだと、あらためて思います。>
今日は、ここまで。では、ごきげんよう!

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